この宇宙の片隅に
-館長による宇宙コラム-

この宇宙の片隅に 館長による宇宙コラム
稲作日記
過去の配信動画はこちら
  • YouTube動画 はまぎん こども宇宙科学館から配信中!
  • 【公式】はまぎん こども宇宙科学館

イベントカレンダー

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
  • 休館日
  • 休館日
くわしく検索

次回休館日

  • 4月
  • 8日~10日、16日
  • 5月
  • 7日、21日
  • 当日参加できるイベント・教室
  • 申込受付中の イベント
団体でのご利用
フロアガイド
洋光台サイエンスクラブ 新規登録・ログインはこちら

科学館オリジナル商品を販売中! オンラインショップはこちら

科学なんでも質問箱

この宇宙の片隅に―館長による宇宙コラム―

宇宙に関わる仕事ってどんなことをしているの?

宇宙開発の大先輩 的川館長が宇宙についてのあれこれを楽しく解説します。
随時更新されるので、掲載をお楽しみに!

月間アーカイブ

火星の大気(5)火星で夕焼けを見ると……(その2)

 先回は、晴れた日の昼間の空がなぜ青いのかを考えました。そうしたら、ある小学生から質問が届きました──「青い空の方向からは赤い光は全然来ていないのですか?」 私はびっくりしました。同じ質問を私自身が小学生の時に先生にしたことがあったからです。赤い光は空気を作っている分子の粒で散乱しにくいとは言っても、少しは散乱しているはずですよね。だから、太陽とは違う方向に目を向けると、その方向から赤い光も来ているはず。ただし青い光に比べて圧倒的に少ないんだね。人間は自分の目に飛び込んでくる光の量でその光の色を感じるから、たくさん届いている色が青だと、青空に見えてしまうんだと思う。私が小さい頃も、そういう納得の仕方をした。

 実は私があのとき先生にした質問がもう一つある──「紫色の方が青色より散乱しやすいのでしょ? じゃあどうして空が紫色に見えないんですか?」

 先生の答えは、「私もよくは分からないけど、紫は散乱しすぎて、上の方へ逃げるのも多いから地上に届く量が少なくなっているのかもな」ということだった。そのときはそれで何となく「そうなのか」と「思わされた」けど、実は大きくなって初めて飛行機に乗ったとき、空が「青い」というよりは「藍色」から「紫色」っぽい色に見えることに気づいて、突然あの小学校時代を思い出した(図1)。あの先生の説明、正しかったみたい……。


図1 飛行機から見た「青空」
(クリックで拡大)

 実際は、人間の目は、紫色への感度は青色への感度に比べて10分の1くらいらしい。

 でもおかげで、今回のテーマである「地球の夕焼けはなぜ赤い?」という疑問が説明しやすくなるような気がします。昼間と夕方の太陽の位置を図2に描いてみました。地上にいるあなたから見て、昼間と夕方で違っているのはどこだろうね? 第一に、太陽が真上にあったのが、低い位置に移ってきた。第二にそれにともなって、太陽が大気の層を旅する距離が長くなっていることが分かります。そうすると、レイリー散乱でどんなことが起きるかな? 紫や青い光はますますあらゆる方向に散乱するし、赤い光も少ないなりにますます散乱するに違いない。


図2 昼間と夕方の太陽光の条件の違い
(クリックで拡大)

 すると青には、昼間の紫と同じ現象が起きて、光が散らばり過ぎる。赤い光は、昼間の青い光みたいに地上のあなたの目に届く量が増える。地球を包んでいる大気の量がちょうどその程度になっているんだと思う。その結果が図3ですね。


図3 地球の昼間と夕焼け
(クリックで拡大)

(クリックで拡大)

 日本語には、似たような言葉がいろいろある。「夕日」、「夕焼け」、「夕暮れ」、「夕闇」、……まだまだある。その違いは以下の通り。


・夕日:夕方の沈みつつある太陽

・夕焼け:日没の頃に西の空が赤く見える現象

・夕暮れ:日の暮れるころ

・夕闇:夕方のうす暗さやその時間帯


夕日と夕焼けは現象につけられた名前。夕暮れは時間帯。夕闇というのは「宵闇」とも言って、ひどく情緒的な表現ですね。私が小さいころ、こんな歌があった。


宵闇せまれば 悩みは果てなし 乱るる心に 映るは 誰(た)が影 ……


 それぞれの言葉から連想する色があるんだけど、あなたはそれぞれ何色を心に浮かべますか。浮かんだ色をレイリー散乱で説明してみましょう。

 そして、夕方の西の空ではなく、朝の東の空では、朝焼けという現象が起きる。このことについてもレイリー散乱と結びつけて考えてみるといいね。ついでだから、次回は「朝焼けと夕焼けの似たところ・違うところ」について話しましょう。


<出典>

(図3左) creative commons