さる7月2日未明に関東上空で火球が目撃され、千葉県の習志野市と船橋市に落下した事件(図1)は覚えていますか。宇宙空間には大変たくさんの天体があり、その中には地球に脅威をもたらす恐れのあるものも数多くあります。近い未来に「地球に衝突するかもしれない」と言われているものも存在しています。
小惑星や彗星に由来するチリが大気圏に高速で突入して流れ星になります。その際、周囲の大気が電離して電波を反射するようになって、地上のレーダーで観測できるようになるのですが、少し前までは、どれぐらいの大きさの流れ星が電波をどの程度反射するのかがよく分かっていませんでした。しかしレーダーが高性能になってきて、最近では重さが0・01ミリグラム~1グラムといった小さなチリの量も見積もることができるそうです。
その結果、流れ星として宇宙から降り注ぐチリの量は、地球全体で毎日1トンほどにも達しているそうですよ。
金星・火星・木星・土星……。目立つ大きな惑星たちの陰に隠れて地味な存在だった小惑星サンプルを持ち帰る「はやぶさ2」などの挑戦は、このような小惑星の衝突事件に備えるためにも大切なことですね。
でもそのずっと前から、小惑星が、人類を含む地球の生き物の未来にとって大変な脅威になっていることが分かっていました。その脅威は、ある日突然にやって来ます。小惑星のかけらである隕石の衝突です。たとえば図2は1908年にシベリアで起きた小天体衝突の直後の写真。爆風でなぎ倒された木々は、実に8000万本。被害の範囲は東京都と同じくらいの広さに及びました。
そしてその恐れが、うわさ話でないことを如実に示したのは、1994年に彗星がバラバラに砕かれながら木星に次々と衝突した事件(図3)。人類が初めてこの目で見た大規模な天体衝突の瞬間でした。木星に起きたことだったら、私たちの住む地球にだって起きる可能性はあります。想像力を働かせれば、この1994年のシューメイカー・レヴィ第9彗星の事件は、身の毛のよだつような出来事だったのです。
さらに約8年前(2013年2月15日)、ロシア中部のチェリャビンスク近郊に大きな天体が落下し、1500人以上がけがをし、学校の校舎をはじめとして7400の建物が被害を受ける事件が起きました(図4)。これは、隕石衝突の国際研究チームによって、直径約20メートルの小惑星が時速6万8400キロで大気圏に衝突する様子が再現されました。そのエネルギー総量は500キロトン以上。隕石は太陽の30倍の明るさを放ち、この100年で最も大きな衝撃を地球に与えたという分析結果が報告されています(図5)。
地球に衝突する可能性のある小天体は1万個以上という報告もありますが、その多くは、火星と木星の間にある小惑星ベルトに起源があります。木星などの引力の影響で軌道が乱れ、地球に接近するのです。地球は、天体衝突の危険にいつもさらされているわけですね。
そしていま世界中のあちこちで、危険な小惑星をあらかじめ見つけようという取り組みが行われるようになっています。みなさんは、今から約6600万年前に小惑星が衝突した(図6)ために、恐竜が絶滅する大きな原因になった(図7)という説を聞いたことがあるでしょう。同じことが今の地球で起きれば、人類はなすすべもなく絶滅します。危険が迫ってきた場合どうしたらいいのか、対策を練る議論も国連をはじめとして世界中で開始されているのです。
たとえば核爆弾を使って破壊するとか、小型の爆弾で小惑星の軌道を変えるとか、近寄って静かに牽引しながら軌道を緩やかに変えるとか、探査機を使って特殊な塗料を吹きかけ太陽の熱の力で軌道を変えるとか、いろいろな案が提出されていますが、決定的なものはまだありません。すべてはこれからもっと真剣に検討・実験をしなければならないテーマです。アメリカもヨーロッパも日本も取り組みに真剣さが加わってきています。「はやぶさ2」の持ち帰る小惑星のサンプルは、こうした研究にも役立つものです。みなさんもこうした活動に関心をもって、参加したり応援したりする人がいっぱいいてくれるといいですね。
[図クレジット]図1 毎日新聞社 図3,6,7 NASA 図5 ロスコスモス