この宇宙の片隅に
-館長による宇宙コラム-

この宇宙の片隅に 館長による宇宙コラム
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この宇宙の片隅に―館長による宇宙コラム―

宇宙に関わる仕事ってどんなことをしているの?

宇宙開発の大先輩 的川館長が宇宙についてのあれこれを楽しく解説します。
随時更新されるので、掲載をお楽しみに!

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野口さん、3度目の宇宙へ──「クルードラゴン」に搭乗

 NASA(アメリカ航空宇宙局)はさる10月26日、日本人宇宙飛行士の野口聡一さんら4人が搭乗する予定の民間宇宙船「クルードラゴン」の打ち上げを、米東部時間11月14日午後7時49分(日本時間15日午前9時49分)に行うと発表しました(図1,図2)


図1 「クルードラゴン」に搭乗する4人の飛行士(右から2人目が野口さん)(クリックで拡大)

図2 クルードラゴンに搭乗する4人の飛行士(いちばん右が野口さん)(クリックで拡大)


 当初、10月31日に打ち上げを予定していましたが、「ファルコン9ロケット」第1段エンジンの装置に想定外の動きがみられ、野口さんらの打ち上げの安全性に支障がないか、データや機体を調べるために延期を決めていたものです。

 米宇宙企業スペースX社が開発した「クルードラゴン」は、5~8月に行われた有人試験飛行で、地球と国際宇宙ステーション(ISS)の往復に成功。今回が初めての本格運用で、野口さんは半年にわたってISSに滞在する予定。

 計画では、野口さんらは宇宙ステーションにおよそ6か月間滞在して科学実験を行うほか、「きぼう」に設置したスタジオから、地上向けに番組を配信するなどの活動を行う予定となっています。今回の打ち上げは、民間企業が宇宙飛行士を定期的に国際宇宙ステーションに送り届ける事業の本格的な始まりとして注目されています。

 野口さんは、今回が3回目の宇宙飛行です。過去2回の飛行では、スペースシャトル(米国)及びソユーズ宇宙船(ロシア)に搭乗しました。今回、クルードラゴン宇宙船に搭乗することで、3種類の宇宙船に搭乗して、ISSへ向かうことになります。3回とも異なる宇宙船に乗るなんて、巡り合わせとはいいながら珍しい経験ですね。

 野口さんの最初の飛行は、2005年7月。 スペースシャトル「ディスカバリー」のSTS-114ミッションに参加。3回の船外活動を行い、軌道上で耐熱タイルの補修検証試験をしたり、ISSの姿勢制御装置などの交換や機器の取付けと回収などを行いました。3回の船外活動の延べ時間は20時間5分!

 2回目は、日本人初のソユーズ宇宙船フライトエンジニアとして、ソユーズ TMA-17宇宙船に搭乗。長期滞在クルーのフライトエンジニアとして ISSに約5ヶ月半滞在し、「きぼう」日本実験棟ロボットアームの子アームの取付けや実験運用などを行いました。また、滞在期間中にシャトルで山崎直子さんが到着し、日本人宇宙飛行士が初めて軌道上に2人同時滞在して話題になりました(図3)


図3 「きぼう」エアロックの前で野口さんを「持ち上げる」山崎直子さん(クリックで拡大)


 そしてこのたび3回目の飛行は、クルードラゴン宇宙船に搭乗して、約半年間ISSに滞在するわけです。今回の長期滞在ミッションでは、ライフサイエンスや医学実験をはじめ、超小型衛星の放出、技術実証等、多くの「きぼう」利用が予定されています。

 技術実証では、宇宙で火災が起きた時の安全性を向上させるために、固体材料の燃焼に重力がどのように影響するかを調べる実験をします(図4)。また、微小重力のもとでの培養技術の開発や新しい薬のためのタンパク質結晶化技術にかかわる実験、静電浮遊炉を使用した高精度の熱物性測定も行います。難しそうな実験ばかりですが、大切なテーマです。

 最近はISSから超小型衛星を放出する取り組みに精力的に取り組んでいるJAXA。今回の野口さん滞在中には、フィリピン、パラグアイの留学生と日本の学生が開発した超小型衛星を3機、放出します(図5)


図4 野口さんが実験に用いる固体燃焼実験装置(SCEM)(クリックで拡大)

図5 グアテマラ・デル・バジェ大学衛星開発チームと放出予定の衛星(クリックで拡大)


 面白そうなのは、「宇宙放送局」。日本実験棟「きぼう」の中に番組スタジオ「KIBO 宇宙放送局」を開設し、宇宙に設置したディスプレイを介して、宇宙と地上でリアルタイムのコミュニケーションを楽しむのです。これは双方向のライブ番組配信で、このためにさまざまな特殊なシステムが開発されています。実はすでに2020年8月12日、「きぼう」と地上間の双方向ライブ番組配信には、世界で初めて成功しました。このときは、一般の視聴者からの映像やメッセージを宇宙空間でライブ紹介する等、数多くの技術実証にも成功しました(図6)。今回は、そのシステムをさらに技術的に発展させ、KIBO 宇宙放送局の第2回目の放送(技術実証)です。楽しそうですね。


図6 きぼう「宇宙放送局」(2020年8月12日)(クリックで拡大)


 アバター体験技術の実証実験も予定されています。新たに開発された「新型エンコーダの軌道上実証」を行いながら、一般の人々が世界で初めてISSを利用した「アバター体験」を行うことも注目です。「きぼう」の窓から宇宙を撮影した動画を特設会場に配信し、特設会場から、一般の人々が「きぼう」船内のカメラシステムを操作することにより、アバター体験をするのです。面白そうでしょう?

 アジア・太平洋地域のハーブ種子を利用した植物実験プロジェクトや東北復興宇宙ミッション2021も注目です。みんなで野口さんに声援を送りましょう。



[図クレジット]図1,2,3 JAXA/NASA  図4,5,6 JAXA