この夏はとても暑い日が続きましたが、科学館の稲は順調に育ち、稲穂が黄金色に垂れ始めました。
先日の強風で倒れなかったものの、根元近くから茎が広がった株がありましたので、昨年の藁を使って中ほどで軽く縛りました。藁はそのままでは固くて扱いにくく折れやすいので、水に浸した後、木槌でたたいて繊維を柔らかくすると用途が広がります。
前にも書いたことがありますが、稲は米が穫れた後の藁は物を束ねる際にも使われました。藁は、繊維を柔らかくして縄にしたほか、俵や筵(むしろ)、草鞋(わらじ)や藁沓(わらぐつ)、正月飾りなどいろいろな道具や飾りの材料になりました。日本家屋では、畳の芯になる畳床には欠かせないものですし、土壁を作ったり屋根瓦を乗せたりする際には、藁を細かく切って土に混ぜて強度を高めるのに使いました。かまどの燃料としても重要なものでした。
藁だけでなく籾殻や糠もいろいろな物に使われました。籾殻は枕の中に入れたり、リンゴなどを運ぶ時のクッション材に使ったりしました。肥料として畑にそのまま蒔くだけでなく、炭焼きにして土壌改良剤としても使いました。
また、白米にするときにはがれた糠(ぬか)は、糠漬けの床として使ったり、廊下や柱などを磨くときに使ったりと用途は多くありました。
そして用済みになった藁は、最後には燃して灰にし、田畑に戻し肥料や土壌改良に使いました。今風にいえば、完全循環型の農作物であり、材料であり、燃料だったのです。
