この宇宙の片隅に
-館長による宇宙コラム-

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この宇宙の片隅に―館長による宇宙コラム―

宇宙に関わる仕事ってどんなことをしているの?

宇宙開発の大先輩 的川館長が宇宙についてのあれこれを楽しく解説します。
随時更新されるので、掲載をお楽しみに!

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「はやぶさ2」、カプセル投下後に新たな小惑星への旅へ──10年後に到着

 現在地球への最後の旅を急ぎつつある小惑星探査機「はやぶさ2」は、12月はじめにカプセルを地球に向けて放出した後、その後約10年かけて新たな小惑星探査に向かう「延長ミッション」に挑むことになりました(図1)

 ターゲットとして2つの小型小惑星が候補に挙がっており、現在さまざまな観点からどちらかを選ぶことになります。その結論は9月ごろまでに決まる予定です。



図1 「はやぶさ2」は、カプセルを分離したら、延長ミッションに向かう(クリックで拡大)


【オーストラリア政府が着陸許可】

 「はやぶさ2」は、ほぼお月さまの距離くらいまで戻ってきたあたりで、小惑星リュウグウのサンプルが入っているカプセルを地球に向かって分離します(図2)。実はこのスプリングによるカプセル分離のメカニズムは、横浜の科学館の近くにある下平製作所で製作したものです。下平製作所は、初代「はやぶさ」の分離カプセルも製作して見事に成功させた実績がありますから、JAXAの信頼も厚いのですね。



図2 「はやぶさ」のカプセル分離(クリックで拡大)


 12月6日に大気圏に突入していくカプセルには、世界の科学者が胸をドキドキさせて待っているリュウグウの生身のサンプルがいっぱい入っていると思われます。スピンによって姿勢の安定を保ちながら大気との壮絶な闘いをし、最後はパラシュートを開いてゆっくりとオーストラリアの砂漠地帯に着陸するのです。まだまだ技術的な難関がいくつも控えています。「はやぶさ2」チームは、10年前の初代「はやぶさ」の経験を振り返りながら、抜かりないオペレーションに向け、チームを挙げて準備をしているところです。

 8月19日には、そのオーストラリア政府から、着陸を許可してくれるという嬉しいニュースが舞い込んできました。許可の発行は8月6日付。オーストラリアでは、新型コロナの感染拡大のさなか、海外からの入国を原則禁止にしています。回収部隊は日本から向かうので、調整が続いていたのです。ひとまずは安堵しました。


【延長ミッションについて】

 さて、カプセル放出後に「はやぶさ2」本体が新たに向かう小惑星の候補が2つに絞られており、そのどちらかをめざすのですが、その2つは、いずれも地球と火星の間の軌道を公転している直径30~40 mの小型小惑星。リュウグウの30分の1くらいの大きさですね。どちらも、リュウグウとは異なり、かなりのスピードで自転しているようです。自転の周期は10分ぐらいと推定されています。

 一つ目は、小惑星「2001AV43」。これを選ぶと到着は2029年11月。30万kmあたりまで近づき、ランデブー飛行をします。

 もう一つは小惑星「1998KY26」。こっちなら、到着が2031年7月。これはC型小惑星の可能性があり、リュウグウとの比較が面白いでしょう。

 いずれにしても、これから10年くらいの旅になりますね。軌道の計画などもすでに発表されていますが、いずれどちらかに決まったら、また詳しくお伝えすることにしましょう。今は、12月6日の吉報を心待ちにしていることに。


【12月6日のカプセル再突入が楽しみ】

 それより何より、来る12月6日にオーストラリア上空に突入してくるカプセル回収の成功を期待して待つことにしましょう。図3は初代「はやぶさ」の突入の際に、イラストレーターの池下章裕さんが描いた想像図です。この壮絶な闘いに、「はやぶさ2」が再び勝利をおさめますように。



図3 これは初代「はやぶさ」の大気圏突入の想像図です。再現されることを願って。(クリックで拡大)


[図クレジット]図1 JAXA   図2,3 池下章裕