この宇宙の片隅に
-館長による宇宙コラム-

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この宇宙の片隅に―館長による宇宙コラム―

宇宙に関わる仕事ってどんなことをしているの?

宇宙開発の大先輩 的川館長が宇宙についてのあれこれを楽しく解説します。
随時更新されるので、掲載をお楽しみに!

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「はやぶさ2」が12月6日に帰還する

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月14日、小惑星探査機「はやぶさ2」の地球帰還の日を12月6日に決定したと発表しました。2度にわたって小惑星リュウグウから採取したサンプル入りのカプセルを地球のはるか上空で切り離し (図1)、オーストラリアのウーメラ砂漠に落下させる予定です。


図1 「はやぶさ2」からカプセルの分離(想像図)



図2 噴射するイオンエンジン(想像図)──現在は4基のうち1基だけ噴射している


 さる5月12日に始まり9月まで予定されているイオンエンジンの噴射 (図2)、10月以降の化学エンジンによる地球接近を含め、これからカプセル帰還のフィナーレに向けた緊張のラストスパートが開始されています。コロナウイルスによる困難と闘いながらのオペレーションは、本当に大変そうですね。

 「はやぶさ2」は2014年12月に、H-ⅡAロケットで種子島宇宙センターから打ち上げられ、2018年6月にリュウグウのそばに到着しました。リュウグウを子細に観察し、岩だらけの地形 (図3)に驚愕しながらも困難を見事に克服して努力を重ね、着地して表面からサンプルを採取、さらにインパクター(衝突装置)を命中させて人工クレーターを作製し、内部から湧き出たサンプルを採取するという離れ業を成功させました (図4)。3億kmの彼方で着地精度が約1 mという、チームの驚異的な技術の高さを見せました。



図3 行ってみると岩だらけだった小惑星リュウグウの表面(「はやぶさ2」撮影)



図4 「はやぶさ2」の見事な着地オペレーション(上:想像図、下:「はやぶさ2」撮影)


 数々の世界初の記録を打ち立てた「はやぶさ2」は、2019年11月13日に地球へ向けてリュウグウを発ちました。往復の旅程は52億kmに及びますが、7月14日の時点で、余すところ3億kmのところまで帰ってきています(直線距離では9200万km)。

 JAXAはオーストラリア宇宙庁に着陸を許可してくれるよう申請していましたが、さる7月14日付でJAXAの山川宏理事長とオーストラリア宇宙庁のメーガン・クラーク長官が共同声明を出すところまで漕ぎつけました。オーストラリア政府では、現在カプセル投下・回収の計画を審査中。着陸許可証が出れば、10年前の初代「はやぶさ」に次いで、歴史的な地球帰還計画の筋書きを最終的に描き終えます。

 計画では、カプセルは大気圏に秒速約12 kmで突入し、高度約10 kmでパラシュートを開いて減速し、12月6日未明に着地します。大気圏突入時に明るく光る軌跡やカプセルの発する信号を地上チームが現地で追跡しながら、最後はヘリコプターで捜索して回収する運びとなっています (図5、図6)



図5 再突入するカプセル(想像図)



図6 カプセル再突入から着地までの流れ(JAXA提供)


 初代「はやぶさ」の時は、そのカプセルからの電波が出なかった時の場合に備えて、編隊を組んで砂漠の広い区域を系統的に探す猛訓練を行いましたが、ヘリコプターが呆気なく見つけたので拍子抜けしたという笑い話のようなオチがつきました。無事に回収できれば、作業を急いで数日以内に日本へ輸送し、分析に入る段取りになっています。

 JAXAは国内の研究者を中心に岩石の破片などを分析する国際チームの編成をすでに終えています。世界中の津々浦々で、小惑星・太陽系の起源と歴史や生命の誕生にかかわる有機物の分析を敢行すべく、今や遅しと帰還を待ち受ける研究者の群れ。

 「はやぶさ2」の総責任者を務める津田雄一プロジェクトマネージャーは記者会見で「はやぶさ2にとって地球帰還は集大成。非常に高い精度が要求されるが、着実にやりたい」と語りました。私たちも楽しみに待つことにしましょう。

 なお、探査機の本体は、カプセルを切り離した後に、化学エンジン(ガスジェット)を噴かして軌道をととのえ、別の天体の探査に向かいます。近いうちにその方針も発表されることになっています (図7)



図7 「はやぶさ2」本体は、カプセル分離後に他の天体に向かう(JAXA提供)



[図クレジット]図1,2,4(上),5 池下章裕  図3,4(下),6,7 JAXA