松本零士さんを悼む
みなさんご存知のように、世界的な漫画家である松本零士さんが、さる2月13日に星の世界へ旅立たれました。零士さんは、幼い頃から漫画を描くことが大好きで、手塚治虫さんに憧れ、やがて手塚さんに師事して懸命に努力し、ついに多くの人々に夢のある未来を開いて見せる世界的な漫画家に成長しました。特に『キャプテン・ハーロック』『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』をはじめとする宇宙をモチーフにした作品群は、日本はもちろん世界の国々で愛読される感動的な傑作で、現在の日本の宇宙飛行士たちのほとんどが、零士さんの漫画によって宇宙への興味の窓を開かれたと言っています。
私自身は、1986年に日本宇宙少年団が結成された時に初めてお会いし、以来40年近くにわたってお付き合いさせていただきました。ご一緒すると、零士さんは、いつも宇宙と平和と子どもたちへの熱い想いを語られ、その心が私の心に流れ込んで来て、元気づけられることがたびたびありました。宇宙と子どもたちをテーマにしたイベントなどで一緒に各地を訪れましたが、そのひとつひとつの思い出を今も忘れることができません。
10年くらい前には、はまぎん こども宇宙科学館に足を運んで、私と対談の後、子どもたちの絵画教室を指導していただいたこともありました。その時に「上手に描こうとしてはだめ。心に浮かんだことを素直に絵にすることが大事」と語りかけた零士さんの言葉に、人柄がよく表れていて嬉しかったことが、鮮やかに思い出されます。
先年、「イタリアで松本零士先生倒れる」とのニュースを耳にした際には大変驚きましたが、幸いにして命はとりとめて帰国されました。その後で一度電話でお話しした時、「まあ寝たり起きたりで、マイってはいるけど、まだまだ99.9歳くらいまでは生きないとね」と、『銀河鉄道999』をもじった冗談を飛ばしていらっしゃいましたが、2月13日に病状が急変したとのことでした。
もっともっとたくさんの大作を届けて欲しかったのですが、詮無いことになりました。「片道切符でいいから行きたい」と常々語られていた宇宙のどこかで、ハーロックやメーテルたちと一緒に、大好きなお酒やカラオケも楽しみながら、ゆったりと過ごされるよう、お祈りするばかりです。
零士さん、本当に淋しくて、心にポッカリと孔が空いていますよ。
本当に長い間ありがとうございました。
的川泰宣

