この宇宙の片隅に
-館長による宇宙コラム-

この宇宙の片隅に 館長による宇宙コラム
稲作日記
過去の配信動画はこちら
  • YouTube動画 はまぎん こども宇宙科学館から配信中!
  • 【公式】はまぎん こども宇宙科学館

イベントカレンダー

1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
  • 休館日
  • 休館日
くわしく検索

次回休館日

  • 4月
  • 7日~11日、15日
  • 5月
  • 7日、20日
  • 当日参加できるイベント・教室
  • 申込受付中の イベント
団体でのご利用
フロアガイド
洋光台サイエンスクラブ 新規登録・ログインはこちら

科学館オリジナル商品を販売中! オンラインショップはこちら

科学なんでも質問箱

この宇宙の片隅に―館長による宇宙コラム―

宇宙に関わる仕事ってどんなことをしているの?

宇宙開発の大先輩 的川館長が宇宙についてのあれこれを楽しく解説します。
随時更新されるので、掲載をお楽しみに!

月間アーカイブ

空想・火星基地出張 その3── 火星人大論争の始まり

 イタリアの天文学者スキャパレッリが1888年に描いた火星の図に見える細長い線状の模様にイタリア語で「すじ(条)」を意味する「カナリ(canali)」という名前を付けたことは前回お話ししましたね。

 この火星の図は国際的にも大きな話題になりましたから、それぞれの国で翻訳されていったのですが、フランスにカミーユ・フラマリオン(1842-1925)という有名な天文学者(図1)がいてね、この「canali」というイタリア語をフランス語の「canal」という語に訳したらしいんです。

図1 カミーユ・フラマリオン(クリックで拡大)

ところが、フランス語の「canal」というのは、「すじ」ではなくて「運河」って意味ですから、そこからまた英語になるときにそのまま同じ「canal=運河」になっちゃったので、成り行きとして、何だか「スキャパレッリが火星に運河を発見!」という印象をみんなに与えてしまった、というわけです。それが混乱の始まりです。
 大体このフラマリオンという人は、結構人騒がせなお方で、確か1910年にあのハレー彗星が76年ぶりで地球に接近してきた時には、「ハレーの尾が含んでいるシアンで地球が滅亡の危機に瀕するかも知れない」などとうそぶいて、世界中を恐怖のどん底に陥れた「実績」を持つ人なんです。まあこのときは確かにハレー彗星が太陽に近づいてできるガスの長い尻尾がちょうど地球を包むことがあらかじめ計算で分かっていた(図2)ので、フラマリオンの言っていることの半分は当たっているんですが、彗星が作るガスの尾は非常に薄い(密度が小さい)ものなので、結局は地球上では何も起きませんでした。

図2 1910年に接近したハレー彗星の尾の変化と地球の動き(クリックで拡大)

 さて話を火星に戻しましょう。フラマリオンが誤解のタネを撒いたように、本当に火星に運河があるとしたら、その運河を作った生き物がいることになりますよね。すると、次には「その火星人はどんな姿をしているのだろう?」という疑問が生じて、世界中にひろがって行ったのでした。

 さて「火星人」という言葉からあなたが思い浮かべるのは、どんなイメージですか? おそらく図3のような姿のものじゃないですか?

図3 『宇宙戦争』(H.G.ウェルズ)の中の火星人(クリックで拡大)

 実は、このタコみたいな形をした「火星人」は、イギリスの作家H.G.ウェルズ(1866-1946)(図4)が『宇宙戦争』というSF(空想科学小説)の中で登場させているヤツなんです。

図4 H.G.ウェルズ(1866-1946)(クリックで拡大)

ウェルズは、乾燥して荒れ果てた火星から地球にやってくるインベーダーとして、この「火星人」を描き出しました。確かこの本が出版されたのは1898年なのですが、想像の産物とは言っても、このタコみたいな生き物には、ウェルズなりの科学的な根拠があったのです。まあここではそのことに詳しく触れるのはやめて、みなさんの推理にお任せしましょう。

 ところで、肝腎の「火星人」ってものは、本当にいるんだろうか? 1900年頃から、このことが科学者たちの間でも真剣に議論され始めました。次回はそのことを紹介することにしましょう。


<出典>

(図1,2) Wikimedia Commons

(図3) 『宇宙戦争』H.G.ウェルズ著 1898年

(図4) Wikimedia Commons