イタリアの天文学者スキャパレッリが1888年に描いた火星の図に見える細長い線状の模様にイタリア語で「すじ(条)」を意味する「カナリ(canali)」という名前を付けたことは前回お話ししましたね。
大体このフラマリオンという人は、結構人騒がせなお方で、確か1910年にあのハレー彗星が76年ぶりで地球に接近してきた時には、「ハレーの尾が含んでいるシアンで地球が滅亡の危機に瀕するかも知れない」などとうそぶいて、世界中を恐怖のどん底に陥れた「実績」を持つ人なんです。まあこのときは確かにハレー彗星が太陽に近づいてできるガスの長い尻尾がちょうど地球を包むことがあらかじめ計算で分かっていた(図2)ので、フラマリオンの言っていることの半分は当たっているんですが、彗星が作るガスの尾は非常に薄い(密度が小さい)ものなので、結局は地球上では何も起きませんでした。
図2 1910年に接近したハレー彗星の尾の変化と地球の動き(クリックで拡大)
さて話を火星に戻しましょう。フラマリオンが誤解のタネを撒いたように、本当に火星に運河があるとしたら、その運河を作った生き物がいることになりますよね。すると、次には「その火星人はどんな姿をしているのだろう?」という疑問が生じて、世界中にひろがって行ったのでした。
さて「火星人」という言葉からあなたが思い浮かべるのは、どんなイメージですか? おそらく図3のような姿のものじゃないですか?
図3 『宇宙戦争』(H.G.ウェルズ)の中の火星人(クリックで拡大)
図4 H.G.ウェルズ(1866-1946)(クリックで拡大)
ところで、肝腎の「火星人」ってものは、本当にいるんだろうか? 1900年頃から、このことが科学者たちの間でも真剣に議論され始めました。次回はそのことを紹介することにしましょう。
<出典>
(図1,2) Wikimedia Commons
(図3) 『宇宙戦争』H.G.ウェルズ著 1898年
(図4) Wikimedia Commons