オーストラリア政府による1年間の審査を経て、8月10日に「着陸してよい」との許可が出されました。「はやぶさ2」の帰還に向けてのスケジュールが一挙に本格化しています。
まず8月28日、イオンエンジンによる軌道修正がほぼ終了し、いったんイオンエンジンの噴射を止めました。現在チームは軌道決定作業を精密に行っています。その結果に基づき、9月半ばに軌道の微修正(TCM)を行うべく、イオンエンジンを再度噴かします。それ以降もTCMの予定があります(図1、表)が、10月以降はすべて化学エンジンで行います。
帰還軌道の全体像をもっと広い視点から眺めると、図2のとおりです。
図1 「はやぶさ2」の地球帰還ラストスパート(クリックで拡大)
表 「はやぶさ2」の帰還スケジュール(クリックで拡大)
さて地球から22万キロメートルまで戻ってきたところで、「はやぶさ2」本体からカプセルが分離されます(図3)。それは12月5日の午後2時~3時(日本時間)頃の予定。カプセルはその後大気圏に突入し、大気の激しい高圧・高温と闘いながら降下し、最後にパラシュートで減速して、オーストラリアの大地に着陸するわけです。その帰還のあらすじがJAXA(宇宙航空研究開発機構)から発表されています。じっくりと眺めてみてください。
hayabusa2.jaxa.jp(外部リンク)
図3 分離後大気圏に突入するカプセル(想像図)(クリックで拡大)
カプセルを地球に向けて放った後、「はやぶさ2」本体は、新たな「延長ミッション」の旅に入ります。どの天体を目標にするかについては、慎重な検討がされました。まず、地球軌道を通過する小惑星・彗星18002個の中から、「はやぶさ2」の残存燃料で行ける可能性のあるもの、それも、ただ通り過ぎる(フライバイ)だけでなくランデブー飛行の可能な天体を354個選び出しました。そして最後の決め手として、工学的にミッション達成が可能で科学的価値の高い小惑星2つ(①小惑星2001AV43、②小惑星1998KY26)が浮かび上がりました。いずれ愛称がつけられるのでしょうが…………。
どちらも、リュウグウの900メートルにくらべて小さく(30~40メートル)、周期10分ぐらいの高速で自転しています。どちらも科学的価値については甲乙つけがたい感じで、到達するには、地球や金星などを何度もスウィングバイする必要があり、これから約10年の旅の末に到達するミッションとなっています。おそらく9月中には、どちらにするかをチームが決定して発表するでしょうから、その時点で、軌道計画についてはくわしく語ることにしましょう。
[図クレジット]図1,2,表 JAXA 図3 池下章裕