この宇宙の片隅に―館長による宇宙コラム―

この宇宙の片隅に(24)

2019年7月11日(木)

【「はやぶさ2」の第2回タッチダウンの時間を発表】

「はやぶさ2」チームは、探査機「はやぶさ2」が予定通り7月11日に小惑星リュウグウへの2回目の着地・サンプル採取に挑む(想像図:図1)と発表しました。降下は、10日午前11時ごろから開始します。今年4月5日に作った人工クレーター近くに着陸することを計画しており、クレーター形成時の噴出物を採取できれば世界初の快挙です。着陸は11日午前10時5〜45分ごろになるということです。

図1 「はやぶさ2」の人工クレーターへの着地(想像図)

【着陸する決断をした裏話】

 2月22日に第一回の着地を成し遂げ、リュウグウ表面のサンプルを採取し、さらに4月5日にインパクターを分離・爆発させて人工クレーターを作り、クレーター生成前と生成後の表面の比較観察をしましたね。

 この後に第2回の着地を敢行するかどうかについて、チームの中では慎重な議論が続けられました。なぜかと言うと、人工クレーターやその付近には、大きな岩石がゴロゴロ分布しており、着地した場所によっては、「はやぶさ2」本体が損傷する可能性もあるからです(図2)

図2 第2回着地点付近の岩石の分布 (数字は岩石の高さの推定値)

図3 第2回着地・サンプル採取のスケジュール

 せっかく1回目にサンプルを採取したのに、2回目の着地がうまくいかないで地球に帰還できなくなったら、元も子もなくなってしまいますからね。もう2回目はやめて無事に帰ることを最優先したい人は当然います。

 一方で、人工クレーターからのサンプルを採取出来たら、宇宙風化にさらされていない貴重なデータを持ち帰って、さらに価値の高い研究成果につなげることができるという大きな魅力もあります。喉から手が出るほど、そのサンプルが欲しい研究者もいます。

 チームには、専門も異なり、また性格も異なり、また組織での立場の異なるさまざまな人たちがいますから、議論は白熱しました。

 「ゴーかノーゴーか」は、プロジェクトマネジャー(津田雄一さん)が最終的には判断します。そして津田さんは2回目のタッチダウンに「ゴー」の決断をしました。その決心を後押ししたのは、1回目のサンプルを分析することを楽しみに待っている仲間が、「2回目にも勇気をもって挑戦しろ」と励ましてくれたことだそうです。1回目のサンプルだって非常に大切な情報を持っていますから、2回目の着地をやめて早く持って帰ってほしいと言いたくなりそうな彼らが、チームの高い技術に信頼を寄せてくれたことが、大事な決断を最終的にプッシュしてくれたそうです。

 お互いを信頼し、一緒に高い目標に挑もうという仲間を持つというのは、嬉しいことですね。7月10日から11日にかけて、ぜひ全力で頑張ってほしいですね。

【第2回タッチダウンのスケジュール】

 2回目の着地・採取は図3のようなスケジュールで行われます。

●ホームポジション(高度20 km)にいる「はやぶさ2」は、7月10日(水)午前11時ごろに降下を始め、最初のうちはLIDAR(レーザー高度計)から発射されるレーザーの往復時間を計って、リュウグウ表面までの距離をモニターしながら降りていきます。
●途中で、さる5月30日に投下したターゲットマーカー(TM)を探して見つけ、そこからはTMを目印にして降下します。
●高度が8.5 mになったことが確認されると、LRF(レーザーレンジファインダー:近距離高度計)からレーザーを4本、リュウグウ表面に照射し、それぞれの示す距離から、着地点の傾斜の具合を測定します。
●地面の傾きが分かったら、「はやぶさ2」の下面がその地面と平行になるように機体を姿勢制御して傾け、ホバリングをしながらタイミングを見定めます。
●そして最終降下→タッチダウン→弾丸発射・サンプル採取→離陸・上昇

 途中からは、地上から指令していると時間的に間に合わないので、上記のオペレーションのほとんどを「はやぶさ2」は、搭載したコンピューター・プログラムに沿って、自律的に、臨機応変に遂行していきます。地上局でつかんでいる情報は、高度だけです。

 結果の成否が分かるのは、着地の後に「はやぶさ2」が舞い上がってから後に、いろいろとデータを送ってきてくれて、それを解析した後のことになりますが、今から待ち遠しい「クライマックス」です。7月12日の午前10時過ぎ──運命の瞬間が楽しみですね。

 

[図クレジット]図1 池下章裕/JAXA  図2 JAXA  図3 図はJAXA提供、説明を筆者編集

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