この宇宙の片隅に―館長による宇宙コラム―

この宇宙の片隅に(7)

2019年1月28日(月)

【クライマックスが近づく「はやぶさ2」】

 さる1月15日、「はやぶさ2」は地球出発以来1500日を迎えました。2月後半のサンプル採取というクライマックスに向けて、いろいろなテストが始まっています。1月18日には、サンプルを採取する装置(サンプラーホーン)の振動試験を念のために行いました。これも順調で、本番に向けての自信と貴重なデータを得ました。今回は、そのサンプル採取の方法を復習しておきましょう。

【小惑星表面からのサンプル採取方法】

 2月後半に「はやぶさ2」がリュウグウの地上に舞い降ります(図1)。「はやぶさ2」のサンプル採取のやり方は、基本的には初代の「はやぶさ」の採取方法を踏襲しています。つまり、筒の形をしたサンプラーホーンの先端が地面に触れた瞬間、コンピューターから指令が発せられて、小さな弾丸が撃ち出されます。するとリュウグウの表面が砕かれて石や砂やホコリが舞い上がるでしょう。それらがホーンの内部を上昇していき、格納庫(キャッチャー)に入るという仕組みなのです(図2)

図1 「はやぶさ2」がリュウグウに舞い降りる(想像図)

図2 「はやぶさ」「はやぶさ2」が採用した小惑星のサンプル採取の方法

 でも、「はやぶさ2」は初代の経験をもとにして、いくつかの改良をしています。

①サンプラーのシール(密閉)性能を上げ、希ガスなど揮発性のガスも密閉して持ち帰れるような方式を新たに開発し搭載したこと、

②サンプルを格納するキャッチャーを初代の2部屋から3部屋に増やしたこと。これで、3度予定している採取の度毎にサンプルを分けて格納することができますね。

③ホーンの先端に小さな折り返し部品をつけたこと。この折り返しの上にサンプルを引っ掛けて、探査機が上昇中に急停止をすると砂礫はそのまま上昇を続けキャッチャーに入る仕組みにしました(図3)。折り返しには1~5mm程度のサンプルが乗るようになっています。少しでもたくさんのサンプルを採取したい意欲の表れですね。

図3 はやぶさ2のサンプラーの新たな工夫

【世界をリードする日本のサンプル採取】

 初代「はやぶさ」は人類史上初めて月より遠い天体からサンプルを持ち帰った探査機です。今や「はやぶさ」のサンプラーは世界をリードしている技術の一つですね。このリードを保ったまま、さらには将来のさまざまなサンプルリターンミッションにも使えるように、益々洗練されたサンプル採取を実行する課題が「はやぶさ2」に託されました(図4)

図4 テスト中の「はやぶさ2」のサンプラーホーン

 「はやぶさ2」では、①サンプルをよりきれいなまま持って帰る、②「はやぶさ」よりもさまざまな種類のサンプル、たとえば希ガスみたいなものも密閉して持ち帰れるようにする、という大きなテーマを追求しました。

 まず②の課題では、サンプルを閉じ込める機構を金属だけで作れば、希ガスなども漏れ出ないのではないかということになりました。特に問題にされたのは、地球に帰還し大気圏に再突入した時にカプセル内で発生する衝撃です。密閉(シール)機構の形・材料を改良してはハンマーで思いっ切りたたくというシール試験を、何度も何度も繰り返したのです。ハンマーで1000回以上たたいたというからすごいですね。また①では、インパクター(衝突装置)という独創的な方法を作り出しました。そのことはまた来週。

 

[図クレジット]図1 JAXA/池下章裕  図2~4 JAXA

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